海外の取引先や、訪日・在留外国人の顧客を増やしたいと考えたとき、まず検討されるのが自社のWebサイトの多言語化です。

ただ、方法は1つではありません。ページを作り直すのか、ツールで自動翻訳するのか、翻訳会社に頼むのかで、費用も手間も、検索での見え方も変わります。

この記事では、Webサイトを多言語化する主な4つの方法を比べたうえで、対象とする言語の選び方、検索エンジンへの対応、翻訳の品質を保つポイント、費用の考え方、進め方とチェックリストまでを順に解説します。

Webサイトの多言語化とは

Webサイトの多言語化とは、日本語のWebサイトの内容を、英語や中国語などほかの言語でも読めるようにすることです。

似た言葉に「ローカライズ」があります。多言語化が言語を置き換えることを中心にするのに対し、ローカライズは、通貨、日付の書き方、単位、問い合わせの方法、写真や事例の選び方まで、相手の国や地域に合わせて調整することを指します。

項目多言語化(翻訳中心)ローカライズ
主な作業文章を他の言語に訳す訳したうえで内容を現地向けに調整する
調整する範囲文章、メニュー、ボタン通貨、日付、単位、連絡手段、画像、事例
向く目的情報提供、会社案内海外での販売、問い合わせの獲得
手間と費用比較的少ない多くかかる

最初からローカライズまで行う必要はありません。目的に合わせて、どこまで調整するかを決めるのが現実的です。

多言語化の前に決めること|目的と対象言語

多言語化で最初に決めるのは、「誰に」「何をしてほしいか」です。海外の企業から問い合わせを受けたいのか、訪日客に来店してほしいのか、国内に住む外国人に情報を届けたいのかで、選ぶ言語も、訳すページも変わります。

訪日客を対象にする場合

観光庁の調査では、2025年の訪日外国人旅行消費額は9兆4,549億円で、前年比16.4%の増加でした(出典:観光庁「インバウンド消費動向調査 2025年暦年の調査結果(確報)の概要」)。

2025年の訪日外国人旅行消費額を国・地域別に比べた棒グラフ。中国、台湾、米国、韓国、香港の順

国・地域別の旅行消費額は、中国が2兆58億円、台湾が1兆2,033億円、米国が1兆1,186億円、韓国が9,906億円、香港が5,614億円の順でした(出典:観光庁「インバウンド消費動向調査 2025年暦年の調査結果(確報)の概要」)。

この順位から分かるのは、英語だけでは届かない顧客が多いということです。中国は簡体字、台湾と香港は繁体字、韓国は韓国語というように、同じ「中国語」でも文字が違う点に注意が必要です。

2026年4〜6月期の訪日外国人旅行消費額は2兆5,125億円と公表されています(出典:観光庁「インバウンド消費動向調査」)。国・地域別の訪日客数は、日本政府観光局(JNTO)が月ごとに公表しています(出典:日本政府観光局「訪日外客統計」)。自社の顧客層に近い国・地域を確認して、言語の優先順位を決めます。

海外企業や在留外国人を対象にする場合

海外企業との取引を目的にする場合は、取引先の国の言語に加え、ビジネスで共通語として使われることの多い英語を用意するのが一般的です。

国内に住む外国人を対象にする場合は、国籍・地域別の在留外国人数を確認できる統計があります(出典:出入国在留管理庁「在留外国人統計」)。自社の地域や業種で多い国籍を確かめてから、言語を選びます。

分かりやすい日本語や英語を基本にする考え方

観光庁のガイドラインでは、案内表示の言語について、英語の併記を基本としたうえで、施設や地域の特性に応じて中国語や韓国語などを加える考え方が示されています。また、文章の書き方について次のように述べています。

必ずしもネイティブでない外国人にも十分伝わる、分かりやすさを重視した平明な言語・文章を採用することが重要である。

出典:観光庁「観光立国実現に向けた多言語対応の改善・強化のためのガイドライン」

これはWebサイトにも当てはまります。英語のページは、英語を母語としない人も読みます。凝った表現より、短く分かりやすい文章を優先すると、多くの人に伝わります。

Webサイトを多言語化する4つの方法

多言語化の方法は、大きく次の4つに分けられます。

Webサイトを多言語化する4つの方法として、言語ごとのページ作成、CMSの多言語機能、多言語化ツール、外部への依頼をまとめた図

方法1:言語ごとにページを作る

日本語のページとは別に、英語版、中国語版などのページを作る方法です。

内容やデザインを言語ごとに自由に調整できるため、ローカライズまで行いたい場合に向きます。一方で、日本語版を更新するたびに、各言語のページも手作業で直す必要があり、ページ数が多いと管理の負担が大きくなります。

方法2:CMSの多言語機能やプラグインを使う

WordPressなどのCMS(Webサイトを管理するシステム)に、多言語化の機能や追加機能(プラグイン)を入れて、言語ごとのページを管理する方法です。

日本語のページと各言語のページを結びつけて管理できるため、どのページが未翻訳かを把握しやすくなります。翻訳そのものは、人が行うか、機械翻訳と組み合わせます。

方法3:多言語化ツール(サービス)を導入する

既存のWebサイトに設定を加えるだけで、各言語の表示を自動で作るサービスを使う方法です。

導入が早く、ページ数が多いサイトでも短期間で多言語化できます。機械翻訳の結果を人が修正できるサービスもあります。月額の利用料がかかることが多く、表示の速さや検索エンジンへの対応方法はサービスによって異なるため、導入前に確認が必要です。

方法4:制作会社や翻訳会社に依頼する

翻訳から多言語ページの制作までを、外部の会社にまとめて依頼する方法です。

品質を重視する会社案内や製品紹介のページに向きます。依頼する範囲(翻訳だけか、ページ制作まで含むか)と、更新のたびに依頼が必要かどうかを、事前に確認します。

方法向くケース主な費用注意点
言語ごとにページを作るページ数が少ない、ローカライズしたい翻訳費、制作費更新のたびに手作業が必要
CMSの多言語機能自社でCMSを運用している翻訳費、設定の手間翻訳の作業は別に必要
多言語化ツールページ数が多い、早く始めたい月額の利用料表示速度や検索対応を確認
外部に依頼品質を重視する、社内に担当者がいない翻訳費、制作費更新時の依頼方法と費用

どの方法を選んでも、すべてのページを一度に訳す必要はありません。会社概要、製品やサービスの紹介、問い合わせページなど、目的に直結するページから始めると、費用と手間を抑えられます。

多言語サイトの構造と検索エンジンへの対応

多言語のページを作っても、検索で見つけてもらえなければ効果は限られます。ここでは、検索エンジンに正しく伝えるための基本を整理します。

言語ごとに別のURLを用意する

Googleは、ページの言語ごとに異なるURLを使うことを推奨しており、Cookieやブラウザの設定で表示する言語を切り替える方法は勧めていません(出典:Google検索セントラル「多地域、多言語のサイトの管理」)。

多言語サイトのURLの分け方として、国別ドメイン、サブドメイン、サブディレクトリ、URLパラメータの特徴を比べた表

URLの分け方には、国別のドメイン(example.de)、サブドメイン(de.example.com)、サブディレクトリ(example.com/de/)などがあります。URLパラメータ(example.com?loc=de)で言語を分ける方法は推奨されていません(出典:Google検索セントラル「多地域、多言語のサイトの管理」)。

URLの分け方例特徴
国別ドメインexample.de対象の国が明確だが、費用がかかり、対象は1か国
サブドメインde.example.com導入しやすいが、言語か国かがURLで分かりにくい
サブディレクトリexample.com/de/導入と管理がしやすい
URLパラメータexample.com?loc=de推奨されない

自動で言語を切り替えない

閲覧者の言語を推測して、自動で別の言語のページに移動させる方法は避けるよう、Googleは案内しています。閲覧者や検索エンジンが、すべての言語版を見られなくなるおそれがあるためです。代わりに、ほかの言語版へのリンクを用意します(出典:Google検索セントラル「多地域、多言語のサイトの管理」)。

hreflangで言語版の関係を伝える

hreflangは、同じ内容のページがほかの言語でもあることを検索エンジンに伝えるための記述です。HTMLのタグ、HTTPヘッダー、サイトマップのいずれかで指定でき、各言語版のページが互いを指定し合う必要があります(出典:Google検索セントラル「ページのローカライズ版について Google に知らせる」)。

簡体字と繁体字のように、同じ言語でも文字が違う場合は、文字の種類を区別して指定できます。多言語化ツールやCMSの機能で自動的に設定されることもあるため、導入するときに対応しているかを確認してください。

翻訳の品質を保つためのポイント

多言語サイトの印象を左右するのは、翻訳の品質です。不自然な訳や誤訳があると、会社や製品への信頼が下がるおそれがあります。

用語集を作って訳語をそろえる

会社名、製品名、サービス名、業界の専門用語は、どのページでも同じ訳語を使います。観光庁のガイドラインでも、訳語のばらつきへの対策として、次のように述べています。

これを回避するには、可能な限り、対訳語の辞書的な一覧を定め、関係者で共有し多言語対応を進めていくことが望ましい。

出典:観光庁「観光立国実現に向けた多言語対応の改善・強化のためのガイドライン」

用語集は、翻訳を外部に依頼する場合も、機械翻訳を使う場合も役立ちます。最初に作っておくと、ページが増えても訳語がぶれにくくなります。

機械翻訳は人のチェックと組み合わせる

機械翻訳は、多くのページを短期間で訳すのに役立ちます。一方で、訳抜けや、文脈に合わない訳が起こることがあります。

会社案内、製品の仕様、価格、利用規約、問い合わせの案内など、間違うと困るページは、人のチェックを入れるのが安全です。機械翻訳で訳した文章を、プロの翻訳者が確認するサービスもあります。たとえば、AI翻訳の誤訳や訳抜けをプロ翻訳者がチェックするサービスは、英語のほか中国語や韓国語、東南アジアの諸言語などにも対応しています。

問い合わせの内容など、個人情報を含む文章を翻訳ツールに入力する場合は、入力したデータの扱いを確認してください。個人情報保護委員会は、生成AIサービスへの個人情報の入力について注意を呼びかけています(出典:個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」)。

他社や他人の文章・画像を訳して載せない

自社のWebサイトに、他社の資料や他人が書いた文章を翻訳して載せる場合は、著作権に注意が必要です。著作権法では、著作物を翻訳する権利は著作者が持つと定められています(出典:e-Gov法令検索「著作権法」第27条)。取引先の製品説明などを訳して載せる場合は、事前に了承を得てください。

多言語化の費用の考え方

多言語化の費用は、方法、言語の数、ページ数、更新の頻度で大きく変わります。一律の相場を示すのは難しいため、次の要素に分けて見積もりを比べるのがおすすめです。

  • 初期の翻訳費:訳す文字数と言語の数で決まることが多い
  • 制作・設定の費用:多言語ページの制作、CMSやツールの設定
  • 継続の費用:ツールの月額料金、更新時の翻訳費
  • 社内の手間:原稿の準備、訳文の確認、問い合わせへの対応

見落としやすいのが、公開した後の費用です。日本語のページを更新するたびに、各言語のページも直す必要があります。更新の頻度が高いサイトほど、継続の費用と手間を含めて比べてください。

外国語での問い合わせが来たときに、誰が対応するかも事前に決めておきます。Webサイトだけを多言語にしても、返信できなければ機会を逃してしまいます。

多言語化しなくてよいケース

次のような場合は、多言語化を急がなくても構いません。

  • 外国語での問い合わせに、社内で対応できる体制がない
  • 海外や外国人の顧客を対象にする予定がない
  • 日本語のサイトの情報が古く、先に整える必要がある
  • 対象の顧客が使うのは、主にSNSや予約サイトなど自社サイト以外の場である

このような場合は、まず英語の会社概要ページを1枚用意する、外部の予約サイトや地図サービスの情報を多言語で整える、といった小さな対応から始める方法もあります。

多言語化の進め方とチェックリスト

多言語化は、次の流れで進めると手戻りを減らせます。

  1. 目的と対象の顧客を決める
  2. 対象言語と、訳すページの優先順位を決める
  3. 方法(ページ作成、CMS、ツール、外部依頼)を選ぶ
  4. URLの構造とhreflangの設定方法を決める
  5. 用語集を作り、翻訳と確認を行う
  6. 公開し、問い合わせへの対応と更新の体制を整える

公開前には、次の項目を確認しておきましょう。

  • 対象の顧客と、多言語化の目的を決めた
  • 言語ごとに別のURLを用意した
  • 各ページに、ほかの言語版へのリンクを置いた
  • hreflangを設定し、各言語版が互いを指定している
  • 会社名や製品名の訳語を用語集で統一した
  • 価格、仕様、規約など重要なページを人が確認した
  • 外国語の問い合わせに対応する担当者を決めた
  • 日本語版を更新したときに、各言語版も直す手順を決めた

あわせて読みたい

ツナグバで、Webサイトの翻訳やAI翻訳のチェックサービスを比べる

ツナグバは、法人向けサービスを無料で探し、複数のサービスの資料をまとめて請求できるサイトです。

AI翻訳の誤訳や訳抜けを、プロの翻訳者がチェックまたは翻訳するサービスを掲載しています。英語だけでなく、中国語や韓国語、東南アジアの諸言語、欧米の諸言語など、多言語に対応しています。全文を翻訳する場合に比べて、コストを抑えられるとしています。

海外取引のある企業が対象で、料金は内容に応じて別途打ち合わせとなります。多言語化したいページの量と言語をまとめたうえで、資料で詳細を確認してください。

こんな課題があれば

  • AI翻訳の誤訳や訳抜けが、そのまま社外に出ていないか不安がある
  • 契約書や提案書など、大切な書類の訳文を確かめる人が社内にいない
  • 英語以外の言語にも対応したい

掲載サービスでできること

  • プロの翻訳者がAI翻訳をチェックする:AI翻訳の誤訳や訳抜けを、プロの翻訳者が確認します。必要に応じて翻訳そのものも依頼できます。
  • 多言語に対応:英語のほか、中国語や韓国語、東南アジアの言語、欧米の言語にも対応しています。
  • 全文翻訳より費用を抑えやすい:AI翻訳を生かしてチェックを中心にするため、すべてを一から翻訳するよりも費用を抑えやすくなります。料金は内容に応じた打ち合わせで決まります。

資料で確かめたいこと

  • 必要な言語と、書類の分野に対応しているか
  • チェックの範囲(誤訳、訳抜け、用語の統一など)
  • 納期と、急ぎのときの対応
  • 料金の決まり方と、見積もりの出し方
  • 機密保持の取り決め

ほかの分野のサービスも見る

よくある質問

まず英語だけを用意すれば十分ですか?

目的によります。海外企業との取引が目的なら、英語から始めるのが一般的です。

訪日客を対象にする場合は、観光庁の調査で旅行消費額の上位に中国、台湾、韓国、香港が入っています(出典:観光庁「インバウンド消費動向調査 2025年暦年の調査結果(確報)の概要」)。顧客層に合わせて、簡体字、繁体字、韓国語も検討してください。

機械翻訳だけで公開しても問題ありませんか?

情報量の多いページを早く公開するには役立ちますが、誤訳や訳抜けが残るおそれがあります。

会社案内、価格、仕様、規約など、間違うと困るページは、人のチェックを入れることをおすすめします。

多言語化すると、日本語サイトの検索順位に影響しますか?

言語ごとに別のURLを用意し、hreflangで言語版の関係を正しく伝えれば、各言語のページは別々に扱われます(出典:Google検索セントラル「ページのローカライズ版について Google に知らせる」)。

設定に誤りがないか、公開後も確認してください。

公開後の更新はどうすればよいですか?

日本語版を更新したときに、各言語版を誰が、いつまでに直すかを決めておきます。

更新の頻度が高いページは、翻訳の依頼方法や、ツールでの自動反映の可否も含めて、最初に方法を選んでおくと負担を減らせます。

参考資料