技能実習制度は、2027年4月1日に「育成就労制度」へ移行します。現在、技能実習生を受け入れている企業や、これから外国人材の受け入れを考えている企業にとって、何が変わるのかを正しく押さえておくことは欠かせません。

育成就労は、技能実習の名前を変えただけの制度ではありません。目的が「国際貢献」から「人材の育成と確保」に変わり、転籍(転職)の扱い、日本語の要件、監理する機関の基準、送り出し機関に払う費用のルールなど、多くの点が見直されます。

この記事では、出入国在留管理庁の公表資料をもとに、育成就労と技能実習の違いを8つの項目で比較します。あわせて、経過措置と施行前のスケジュール、企業が今から準備すること、育成就労が向いていないケースも整理します。

育成就労制度とは

育成就労制度は、育成就労産業分野において、日本での3年間の就労を通じて特定技能1号の水準の技能を持つ人材を育てるとともに、その分野の人材を確保することを目的とした制度です(出典:出入国在留管理庁「育成就労制度の概要(令和8年7月改訂)」)。根拠となる改正法は令和6年6月21日に公布され、一部の規定を除き令和9年(2027年)4月1日に施行されます(出典:出入国在留管理庁「令和6年入管法等改正について」)。

技能実習制度は、開発途上国への技能の移転による国際貢献を目的としてきました。一方で、実際には人手不足を補う役割を担っている実態との食い違いや、原則として転籍できないことによる課題が指摘されてきました。育成就労制度は、こうした課題を踏まえて作られています。

令和8年1月23日には、特定技能と育成就労の基本方針・分野別運用方針が閣議決定されました(出典:出入国在留管理庁「基本方針・分野別運用方針」)。令和11年3月末までの受入れ見込数は、育成就労で426,200人、特定技能1号で805,700人、合計1,231,900人とされています(出典:出入国在留管理庁「分野別運用方針の主要な記載事項」)。

令和11年3月末までの受入れ見込数が、特定技能1号805,700人、育成就労426,200人であることを示す棒グラフ

施行日には、企業に関わるほかの変更もあります。在留資格に合わない仕事をさせた場合などに問われる不法就労助長罪の罰則が、「3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金」から「5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金(併科あり)」に引き上げられます(出典:出入国在留管理庁「改正法の概要(育成就労制度の創設等)」)。受け入れの方法にかかわらず、在留資格の確認をこれまで以上に徹底する必要があります。

育成就労と技能実習の違い【比較表】

まずは主な違いを一覧で確認します。表の内容は、出入国在留管理庁の「育成就労制度の概要」と「育成就労制度Q&A」をもとに整理したものです。

技能実習と育成就労の違いを、目的・在留期間・転籍・日本語要件・送り出し機関の費用で比べた表
項目技能実習育成就労
目的技能移転による国際貢献人手不足分野での人材育成と人材確保
在留期間最長5年(1号1年、2号2年、3号2年)3年以内(特定技能1号の試験に不合格の場合、再受験のため最長1年の在留継続あり)
対象職種・作業ごとに設定育成就労産業分野(特定技能の分野のうち、就労を通じて技能を修得させることが相当なもの)
転籍原則不可(やむを得ない場合のみ)やむを得ない場合に加え、一定の要件で本人の意向による転籍が可能
日本語の要件原則なし(介護を除く)就労開始までにA1相当以上の試験合格、または相当する講習の受講
監理する機関監理団体監理支援機関(許可制で、許可基準を厳格化)
送り出し機関の費用本人負担の上限なし本人から徴収できるのは月給の2か月分まで
受け入れの上限分野ごとの上限なし分野ごとに受入れ見込数(上限)を設定

主な違いを項目別に解説

1. 目的と位置づけ

技能実習は、日本で学んだ技能を母国に持ち帰ってもらう国際貢献の制度でした。育成就労は、外国人を日本の産業を支える人材として位置づけ、3年間で特定技能1号の水準まで育てることを目的にしています。

目的が変わったことで、制度全体が「長く日本で働いてもらう」前提で組み立てられています。育成就労から特定技能1号、さらに特定技能2号へと進む道筋がはっきりしたのは、大きな変化です。

2. 在留期間とキャリアパス

技能実習は、1号・2号・3号と段階を踏んで最長5年でした。育成就労は3年以内です。特定技能1号の試験に合格できなかった場合は、再受験のために最長1年の在留の継続が認められます。特定技能1号は5年、特定技能2号は在留期間の上限がありません(出典:出入国在留管理庁「育成就労制度の概要」)。

企業から見ると、3年の育成期間のあと、同じ人材に特定技能として働き続けてもらう計画を立てやすくなります。

3. 対象分野

技能実習は、職種・作業ごとに受け入れの対象が決められていました。育成就労は、特定技能の分野のうち、就労を通じて技能を修得させることが相当なものが対象です。令和8年1月の分野別運用方針では19分野の別紙が示され、そのうち航空と自動車運送業は「育成就労産業分野の設定はありません」とされています(出典:出入国在留管理庁「基本方針・分野別運用方針」)。つまり、育成就労の対象は17分野です。

技能実習のすべての職種が引き継がれるわけではありません。分野の追加や見直しは有識者会議で議論が続いているため、自社の業務が対象になるかを最新の分野別運用方針で確認してください。

4. 転籍(転職)のルール

最も大きな違いが転籍です。技能実習では、やむを得ない事情がある場合を除き、転籍は原則として認められていませんでした。育成就労では、一定の要件のもとで本人の意向による転籍が認められます。

  • 転籍前の受け入れ先で、分野ごとに定められた期間(1年から2年の範囲)を超えて働いていること
  • 技能検定基礎級などの技能の試験と、日本語能力A2.1相当以上の試験に合格していること
  • 転籍先が、適正性の基準を満たしていること

要件は、出入国在留管理庁の「育成就労制度の概要」と「改正法の概要」に示されています。分野ごとの転籍制限期間は、分野別運用方針で1年または2年と定められています(出典:出入国在留管理庁「分野別運用方針の主要な記載事項」)。自社の分野の期間は、原典の表で確認してください。

5. 日本語の要件

技能実習では、介護を除いて、入国時の日本語の要件はありませんでした。育成就労では、就労を始めるまでに、日本語能力A1相当以上の試験(JFT-Basic、JLPTのN5など)に合格するか、相当する講習を受講する必要があります。特定技能1号へ移る時点ではA2.2相当以上、特定技能2号ではB1相当以上が目安です(出典:出入国在留管理庁「育成就労制度の概要」)。

3年間の目標について、出入国在留管理庁のQ&Aは次のように説明しています。

育成就労の目標として、日本語能力については、基本的に、3年間を通じて日本語教育参照枠A2.2相当の日本語能力を修得し、試験に合格することが求められます。

出典:出入国在留管理庁「育成就労制度Q&A」

受け入れ企業にとっては、仕事を教えるだけでなく、日本語の学習の時間や教材を用意し、試験の受験を支えることが計画の一部になるということです。

6. 監理団体から監理支援機関へ

技能実習の監理団体は、育成就労では「監理支援機関」に代わります。監理支援機関は許可制で、許可の基準は厳しくなります。許可基準の一つとして、外部監査人を設置していることが挙げられています(出典:出入国在留管理庁「育成就労制度Q&A」)。

今の監理団体が、そのまま監理支援機関になれるわけではありません。許可を受けなければ監理支援事業は行えません(出典:出入国在留管理庁「育成就労制度の概要」)。取引のある監理団体が許可を申請しているか、早めに確認しておくことが大切です。

7. 送り出し機関に払う費用

技能実習では、来日前に送り出し機関へ高い手数料を払い、借金を抱えて来日する実習生がいることが問題になっていました。出入国在留管理庁の調査では、送出機関に支払った費用の平均は52万1,065円、来日前に母国で借金をしている人は約55%でした(出典:出入国在留管理庁「技能実習生の支払費用に関する実態調査」結果)。育成就労では、この点に上限が設けられます。

育成就労制度では、送出機関が育成就労の対象となろうとする外国人から徴収できる費用の上限を月給の2か月分までとすることとしました。

出典:出入国在留管理庁「育成就労制度Q&A」

本人から徴収できる額に上限がある以上、送り出しにかかる費用のうち上限を超える部分は、受け入れ側の負担として見込む必要があります。企業側の費用負担は、技能実習より増える可能性があります。

8. 受け入れ人数の上限

技能実習には、分野ごとの受け入れ人数の上限はありませんでした。育成就労では、特定技能と同じく、分野ごとに受入れ見込数が定められ、上限として運用されます(出典:出入国在留管理庁「育成就労制度の概要」)。

特定技能では、外食業分野で令和8年4月13日以降に受理した在留資格認定証明書の交付申請を不交付とする措置がとられました(出典:出入国在留管理庁「特定技能『外食業分野』に係る在留資格認定証明書交付の一時停止措置について」)。育成就労でも、分野によっては上限に達する可能性があることを念頭に置いておく必要があります。

施行までのスケジュールと経過措置

育成就労の施行に向けた手続きは、施行日の前から始まっています。出入国在留管理庁は、施行日前申請について次のように案内しています。

令和8年4月15日から監理支援機関の許可、同年9月1日から育成就労計画の認定に係る施行日前申請を外国人技能実習機構で受け付けています。

出典:出入国在留管理庁「施行日前申請」

施行日に間に合わせて育成就労で受け入れたい企業は、すでに計画の申請ができる段階にあります。取引先の監理団体の許可申請と、自社の育成就労計画の準備を並行して進めます。

育成就労制度の施行までの流れを、閣議決定、監理支援機関の施行日前申請、育成就労計画の施行日前申請、制度の施行の4段階で示した図
時期内容
2026年1月23日特定技能・育成就労の基本方針と分野別運用方針を閣議決定
2026年4月15日〜監理支援機関の許可の施行日前申請の受付開始
2026年9月1日〜育成就労計画の認定の施行日前申請の受付開始
2027年4月1日育成就労制度の施行。技能実習は経過措置を除き終了

経過措置として、施行日の時点で技能実習を行っている人は、引き続き技能実習を行えます。施行日前に技能実習計画の認定を申請している場合は、施行日以後の入国が認められることがあります(出典:出入国在留管理庁「育成就労制度の概要」)。

技能実習1号から2号への移行はできますが、2号から3号へ移れるのは、2号の活動を1年以上行っている人に限られます。また、技能実習から育成就労へ切り替えることはできません。施行日前に出国した技能実習生は、技能実習生として再入国できません(出典:同資料)。

企業にとっての影響

育成就労への移行は、企業にとって良い面と負担が増える面の両方があります。

プラスになりやすい点

  • 3年間の育成のあと、特定技能として長く働いてもらう計画を立てやすい
  • 日本語の学習が制度に組み込まれ、職場でのコミュニケーションの土台ができる
  • 送り出し機関の費用のルールが整い、借金を抱えた来日によるトラブルが減ることが期待される

負担や注意が必要な点

  • 一定の期間を過ぎると転籍が認められるため、待遇や職場環境によっては人材が流出する
  • 送り出し機関の費用のうち、本人から徴収できない部分は企業側の負担になり得る
  • 日本語の学習の機会の確保や、試験の受験の支援が必要になる
  • 分野ごとの受け入れ上限に達すると、新たな受け入れができなくなることがある

転籍が可能になることは、企業にとっては「選ばれる職場づくり」が求められるということです。給与、教育、住環境、相談のしやすさなどで、ほかの企業と比べられる前提で準備を進める必要があります。

企業が今から準備すること

制度を選ぶ判断基準

これから外国人材を受け入れる場合、育成就労・特定技能・技能実習(経過措置)のどれを使うかは、次の基準で考えると整理しやすくなります。

  • 即戦力が必要で、試験に合格した人材を採用できるなら、特定技能
  • 未経験の人材を3年かけて育てたいなら、育成就労
  • 施行日前の認定申請が間に合い、従来の仕組みで受け入れたいなら、技能実習(経過措置)
  • 自社の業務が育成就労の対象分野に入らない場合は、特定技能や、ほかの在留資格を検討する

準備のチェックリスト

  • 自社の業務が、育成就労産業分野に当てはまるか確認したか
  • 取引のある監理団体が、監理支援機関の許可を申請しているか確認したか
  • 受け入れ中の技能実習生について、経過措置の対象と今後の在留の見通しを整理したか
  • 日本語の学習の時間や教材を用意できるか
  • 送り出し機関の費用のうち、企業が負担する分を予算に入れたか
  • 転籍されないための待遇(賃金、評価、住居、相談体制)を見直したか
  • 育成就労計画の作成と、技能・日本語の試験の受験計画を立てられるか

送り出し国との取り決めは、出入国在留管理庁の「育成就労に関する二国間の協力覚書」のページで確認できます(出典:出入国在留管理庁「育成就労に関する二国間の協力覚書」)。送り出し国の事情によって、手続きや期間は異なります。特定の国からの受け入れを考えている場合は、ミャンマーの送り出し機関と連携した採用支援のように、その国の送り出し機関と連携しているサービスに、制度の移行後の進め方を確認しておくと安心です。

育成就労が向いていないケース

次のような場合は、育成就労よりもほかの方法を検討したほうがよいことがあります。

  • すぐに戦力になる人材が必要で、3年間の育成の計画を立てる余裕がない
  • 自社の業務が育成就労の対象分野に入らない
  • 日本語の学習や試験の受験を支える体制を社内でつくれない
  • 待遇の見直しが難しく、転籍のリスクに対応できない

自社でできることもあります。分野別運用方針や出入国在留管理庁の育成就労制度のQ&Aを読み、自社の分野の要件を確認することは、費用をかけずに始められます。出入国在留管理庁は解説動画も公開しています。受け入れ中の技能実習生への説明や、今後の在留の希望の聞き取りも、社内で進められる準備です。

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よくある質問

技能実習生を今から受け入れることはできますか?

施行日前に技能実習計画の認定を申請している場合は、施行日以後の入国が認められることがあります。ただし準備の期間を考えると、これからの受け入れは育成就労や特定技能を前提に計画するのが現実的です。具体的な期限は、出入国在留管理庁と外国人技能実習機構の最新の案内で確認してください。

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本人の意向による転籍には、分野ごとに定められた1年から2年の就労期間、技能と日本語の試験の合格、転籍先の適正性などの要件があります。入社してすぐに転籍できるわけではありません。ただし、要件を満たせば転籍は可能なため、待遇や職場環境の見直しが大切です。

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育成就労と特定技能はどう違いますか?

育成就労は、未経験の人材を3年かけて特定技能1号の水準まで育てる制度です。特定技能1号は、試験などで一定の技能と日本語力があると確認された人を、即戦力として受け入れる在留資格です。育成就労を終えて試験に合格すると、特定技能1号へ移ることができます。

育成就労の外国人は家族を連れて来られますか?

出入国在留管理庁のQ&Aでは、育成就労では原則として家族の帯同を認めないとしています。特定技能2号に移り、要件を満たせば、家族の帯同が可能になります。

参考資料